会報15号より 危険がいっぱい家の中で猫たちを守る第五ヶ条

<第一条>

ケージの危険から守る

 そろそろ 2ヶ月を迎える頃の子猫たちは元気いっぱい。 2段式のケージの中を自由自在に飛び回っています。下の段から上の段まで一気に飛び移るのはまだ無理、でも、ケージの枠を足場にして上手に上の段に移っていっては得意そう。  ところがこんな事件が起こってしまいました。

生後50日令のカイのケース

 私の家では出産が暖かい季節の場合には他の猫たちと別の部屋に産室を設けますが、寒い季節には暖房の関係上、居間に置いた 1メーター80の高さのケージを上下に仕切って上段を子猫用にします。 60日を過ぎるとワクチンを接種して、それから他の猫たちと一緒にして社会性を身につけさせるのですが…
 
 想像を絶した悲惨な事故が起こってしまいました。

 カイは 3人兄弟の一番上、身体が大きく行動も活発で少し乱暴なほどでした。 クルクルクルクルめまぐるしいほどケージの中で暴れ回っているのを見ながら、「今夜も元気ね、カイ君。お休みなさい。」などと呑気にお休みなさいをしてその翌朝……

「どうしたの ? カイ !!!」

 うずくまったままじっと動かないカイ。
 どうしたのよ !と抱き上げて、その瞬間指の異常に気がつきました。指というより手全体が腫れ上がっていたのです。一瞬眼を背けたくなって、でも見ないわけにはいきません。まん丸に、ぱんぱんに腫れ上がって熱を持ったカイの小さな手。 抱きしめると身体が小刻みに震えています。
 『かわいそうに、かわいそうに』と声をかけながらそっと傷を調べてみると、爪がついたまま指のパットの部分がなくなってしまっています。
 しばらくの間傷口をパイウオーター につけて冷やした後応急処置を施しましたが、子猫同士の喧嘩かと思いました。ずっとそう思っていました。 カイのもげてしまったパッド(指球)を発見するまでは…

 事実は無惨な恐ろしいものでした。

 しゃれたケージのドアの上部に、考えてもみない死角があったのです。楕円形のドアのすぐ上に鋭い鋭角的なコーナーが左右に一カ所ずつ、下段のドアもいれると計 4カ所危険なコーナー。 カイの指のパッドは上段のその鋭いコーナーにすっぽりはまってもげていたのです。
 挟まってしまったパッド、どんなにもがいてはずそうとしたことでしょう。
 どう足掻いてもはずすことができなくて吊るさったままきっと長い長い時間が経過して、ついにカイは全身の力を振り絞って手を引き抜いたのでしょう。 すっかり干からびた小さなパッドを発見したのは、だいぶ経ってからのことでした。

 “何かしら ?”
しばらく考えて、掌に載せてまじまじと眺めているうちに、全身が総毛立つ思いでした。 紛れもなくその小さな乾燥した小豆状のものは、失われたカイのパッドでした。

 なぁに ?なぁに ? と、当のカイを先頭に好奇心旺盛な子猫たちが集まってきました。もうそのころにはカイもすっかり元気になっていて、もげてしまった自分のパッドをフンフンと匂いを嗅いでちょんちょんと触ったり、でもまさかそれが自分の指についていたものとは思いも寄らなかったに違いありません。

 現在そのコーナーは二度と同じ過ちを繰り返さないように、しっかりとテープを巻いて危険のないようにしてあります。そしてカイは、指の一つは失ったけれど、素敵なオーナーさんのもとで幸せに幸せに安穏な日々を送っています。

★子猫の指がすっぽりはまってしまうようなケージをお持ちの方は、くれぐれもご注意の上、安全対策をたてておいて下さい。子猫の頭が挟まって死亡したという悲惨な例もあるそうです。
 

<第二条>

異物を食べる危険から守る

 カサカサ音がしたり、コロコロ転がっていくものは猫たちにとっては大変興味をそそられるものです。
ただ遊んでいるだけならば問題はありませんが…こんな事件がありました。

ユカリさんのケース

 埼玉にお住まいのGさんから突然のお電話。
「ユカリさんが嘔吐を繰り返し、赤い血液が混じった液を吐くほどになったのでこれから病院に連れて行きます。」
 ユカリさんとはトンキニーズの女の子です。『検査の結果は ?』と心配して待つほどに、やがてまたお電話。

 「胃潰瘍かもしれないし、もっと悪性の腫瘍の疑いがあるのですぐ手術の必要があると言われたがどうしようか?」
で、どんな検査をしたの ?と聞いてもはっきりしない。

 数日嘔吐が続いていたということだし、血液検査の結果などで分かったデーターが欲しいから私から直接その病院の担当の先生にお電話してみたいと頼みました。ところが返ってきた返事は納得いかないものでした。

『とにかくすぐに手術が必要で、費用はこれこれ。』
ええ ??? そんな法外な !!!

 とんでもない高額な費用にも驚いたし、説明は必要ないとにかく手術、と決め込んでいる医者の態度も納得がいかなくて、すぐにユカリさんをその病院から連れ出しなさいと強引にGさんを説得して、その晩仕事が終わってから東北自動車道をとばして浦和に駆けつけ、ユカリさんを預かって再び東北自動車道を宇都宮まで一気に駆け抜けU先生のもとに。

 翌朝…
 受話器を通してU先生の明るい声。

「すごかったですよ、ビニールがいっぱい胃の中に入っていて、でも全部取り出しましたからもう心配ありません。」
 なんと手術などすることなしに内視鏡で胃の中を見ながらモヤモヤ写っていたビニールを取り出してくださったのだそうです。念のためと一週間ほど入院してから、すっかり元気になったユカリさんは退院。この件があって、浦和のGさんは何か少しでも心配なことがあると、浦和からJRに乗ってはるばる宇都宮に通ってくるそうです。

 異常嗜好は、例えばこのユカリさんのようにビニールの場合とか特定の絨毯であるとかケースは様々で、私の家でもやはりビニールそれもカシャカシャ音のするようなスーパーの袋が好きな子がいて、一度肝を冷やした経験があります。
 噛んでいるのを見つけてカシュカシュ噛んでいる袋を取り上げて安心していたのですが、どうもその日から食欲がない、変だ変だと思いながら病院に連れて行ったところが、取り上げたはずのビニールの切れっぱしが輪のようにすっぽり舌の付け根にはまっていて、舌を締め付けていたのです。

★子猫の時から充分気をつけて、異常嗜好の傾向がある場合は決して室内にそれらのものを置かないよう点検を怠らないよう。 また、ハイターのような漂白剤が大好きという猫もいますので、布巾や食器をハイターにつけ置きする時なども猫がその水を飲んだり手でかき回して遊んだりできないようにシンクにカバーをするなど注意を払ってください


★☆★VOL15のコーナーに寄せられたアドバイスをご紹介いたします★☆★

 危険がいっぱいシリーズを拝見して思ったのですが、みなさんがそれぞれ知恵を絞って実行していらっしゃる危険回避策をもちよっていただくというのは、いかがでしょうか ?  私は台所用品にハイターを使用する場合、スーパーの買い物袋の中にハイター溶液を作り、そのなかに布巾や茶碗などを入れて上をぎゅっとしばり、外側に漏れた溶液を十分に洗い流してから放置するようにしています。こんな方法は、それぞれがどこかしらで仕入れてきた知識の蓄積だと思います。そんなアイディアを共有することが出来れば、本来の目的である「猫にとって安全な環境の実現」に役立つのではないでしょうか。


<第三条>

草・花・木、室内を飾る植物から守る

会報 VOL15. “危険がいっぱい家の中”参照 猫にとって危ない植物のリストを掲載

<第四条>

家庭電化製品・暖房器具から守る

会報 VOL15. “危険がいっぱい家の中”参照

<第五条>

人の病気を移すことから守る

家のミミのケース

 ご主人の晩酌の時間はミミにとってもご主人にとっても一日のうちで一番幸せなひととき。
 ちびりちびりと杯を傾けながらイカの薫製、ホタテの貝柱、ビーフジャーキーを揃えて順繰りに柔らかく噛んでは口移しでご主人はミミに与えていたそうです。ご自分が歯が悪く歯槽膿漏なのに、ミミに固いものは悪いとわざわざ噛んで…
 すっかりそれが習慣になっていましたが、やがてミミは腎臓を病んで入退院を繰り返すようになりました。
 イカの薫製やホタテの貝柱などとんでもない、絶対駄目ですと退院するときにはドクターストップがかけられ、加えて「人が噛んで与えることで、ばい菌も移している危険があるのですよ」と忠告され、Kさんはその時ご主人の歯槽膿漏のことが喉まででかかったけれど、つい言いそびれてしまったと話していました。
 ミミの腎臓病がご主人のせいであったかどうかはわかりませんが、それからは口移しはミミのために禁止になったそうです。

★口移しで猫に食べ物を与えることは、人のために良くないと言われてきましたが、猫にとっても良くないことであると認識しましょう。

 意外に多い家の中の危険。でも、第一条から第五条まで、オーナーのあなたが気をつけるだけで簡単に防げる危険です。
 どうかあなたの猫はあなた自身で守ってあげてください。