会報22号より 賢い遺伝子 ルーツを探る

【教育猫の家系】 友成 晴世

 猫はかわいければそれで十分。でも、もしとても賢い子がいて、そのラインの子達がつぎつぎにそのDNAの中に賢い種を宿して生まれてくるとしたら、わかる限りそのルーツをたどってみるのは、血統登録された純血種のみにできるちょっとした贅沢ではないでしょうか。
 臼井玲子先生の一言から、我が家の賢い遺伝子のルーツを探ってみました。

飛駒キャッテリー賢い遺伝子家系図

Beauty Master Lady Abbey(アビー)

 ◆私のところに初めてやってきたバーミーズのアビー(ローリーの孫)はとても賢い猫でした。2回想像妊娠をして2回目は予定日に中身のない風船のような袋を産んだだけで、とうとう母親にはなれませんでした。 けれども彼女は他の猫が産んだ子猫に遊び(?)を教える教育係を務めてくれました。

 主人が作る輪にしたモールをくわえてきては何度でもそれを投げてとせがみます。それも近くの取ってきやすいところに投げたのでは気に入らなくて、高いところや箱の陰のわかりにくいところなど変化に富んだ場所から見つけて持ってくるのが得意でした。輪を2個投げると、考えて2個を順番にくわえて来ました。調子が良いと3個までくわえてきました。また、遊びたくなるとおもちゃ箱の蓋を開けて中からモールをくわえて膝元に持ってきては、遊んでと鳴いてせがみます。

 お散歩用にリードを用意していた時期には、箱にしまっておいたそのリードをくわえて、やはり投げてとせがむことも多かったのですが、ある時高い棚の上から降りようとして長い紐のはしの方を踏んでしまって、危なく落ちるところでした。危ういところで踏みとどまりましたが、以後、「アビー!気を付けて、よく見なさい!」と注意を与えるとくわえた紐を更に何カ所かくわえ直して上手にコンパクトにまとめて持ってくるようになりました。

 また、色の好みがあって、黄色い色を好みました。毛糸玉や、リードやそのほかのおもちゃでいくつか試してみましたが、同時に投げると必ず黄色いおもちゃにとんでいきます。色がわかるのかと不思議でした。そのアビーが教育係になって、子猫たちに遊びを教えるようになり、子猫たちはみんなアビーがするのをまねて「遊び」をするようになりました。簡単なことができるようになると、アビーは次のステップとして、高いところからモールを落として子猫に与えるようなことも好んでしていました。

Beauty Master Curious(アスティー)

 ◆ローリーの息子のアスティーも、やはり賢さではアビーに勝るとも劣りませんでした。豊かな感性を持った猫でした。また、ムカデ取りを得意として、私たちが天井を張るだけの余裕がなく、剥き出しの屋根の下で生活していたときには、梁をはい回る大ムカデを何匹もとらえては私たちを危険から守ってくれました。

 彼の息子のマオ君は、やはり賢い猫で、譲り先のお宅で危うく火事になるところを飼い主に教えて、大変感謝されました。そのお宅にはご主人がいらっしゃらなかったため、マオ君が一家の主として家の中を常に見回ってしっかりと一家を守っていたと言うことです。

Beauty Master Gabriel(ゴールディー)Fuzzy

 ◆ローリーを母とするゴールディーは、特に目立ったことはない普通の猫でしたが、その娘のHikoma's Fuzzy(ファジー)はアビーと同じく教育ママでした。

 良い母親で、子猫の面倒を見るのが上手な上、絶えず子猫たちを呼んで集めては、「遊び」を教えます。ウワオウワオと独特の鳴き声をあげてかなり大きなおもちゃを持ち歩きます。避妊をした後も変わらずにそれを続けています。母親になったときには、いったん自分が食べたものを吐き出して子猫を呼んで与えたり、階段などの子猫に危険がありそうな場所に子猫が近寄っていくと、大きな声でたしなめるように鳴いて止めますが、それでも子猫が戻らないと、ちょうど大和便のトレードマークのように、首筋をくわえて引き戻します。

Hikoma's Myakun(みゃっくん)

 臼井先生のところにお世話になっているみゃっくん が、この「ルーツを探る」のきっかけとなった猫です。みゃっくんはファジーの娘で、顔かたちが母親にそっくりなだけでなく、行動もよく似たパターンをとるようでした。はじめ“靴下を運ぶの”と玲子先生から伺ったときは、なんと言うこともなく聞き逃してしまいましたが、室内で同居している犬にトイレの躾をすると伺ってびっくりしてしまいました。

 また、さらに驚くことがありました。「友成さん、みゃっくんもね、黄色が好きなの」えぇ????そういえば良一先生が「みゃっくんはキチビちゃんが好きなんですよ」と仰ったことがあって、“え、キチビちゃん?”「ええ、黄色いぬいぐるみなんですよ」と教えていただいたことも“あぁ、そういえばあった、あった!”

 『色』がわかる!(と、ちょうどこれを書きかけているときにNHKの新日本人の質問特集番組「犬と仲良くする方法」に玲子先生が出演なさっておられるので拝見していたところ、「犬は色がわかる・・・正解」というクイズもあって、ちょうどうまいタイミングで同じことを・・・と、その偶然にもちょっとびっくり。)

Hikoma's M Mai(舞)

 舞はファジーの孫に当たります。ファジーによく似た容貌で、やはり子育てが上手で、ファジーと同じように「遊び」を子猫たちに教えます。

March Hare M Goopy(グーピー)

 舞の娘で三枝家に行ったグーピーも、靴下マニアで一家の靴下をせっせと運ぶそうです。

 出産の経験もなく避妊してしまっていますが、同じ家で飼っている小型犬に教えるように鳴きながら靴下を運んでみせるそうです。上のお嬢さんの美緒さんのベッドがお気に入りで、靴下はそこに集まってくるそうです。

March Hare Ren(蓮)

 蓮も舞の娘です。彼女はティッシュを丸めたものが好きで、繰り返し「投げて」とせがみます。何回も遊んでいるうちに汚れてくると、お水が入った容器のなかに丸めたティッシュのボールを落として遊びを終了します。最近彼女もお母さんになりましたが、やはりワオワオと自分の子を呼んで、教えるような素振りを見せています。

 簡単ですが、「教育的な遊び」が確認できたのは我が家ではアビーが第1号になりますが、以下、ファジー、みゃっくん、舞、グーピー、蓮と雌猫に引き継がれて現在に至っているようです。

 もちろん雄ネコたちも投げたおもちゃを運んできますが、雌猫が子猫たちに教えようとしてする場合と違って、ただ自分の遊びのためであるようでした。

 こうして調べた結果これらの「教育的な遊び」を行うルーツになっているのは、Rio Vista Rolliだったことがわかりました。はるばるカナダから日本に、賢いDNAはやってきたのです。

 みなさんもそれぞれのラインの中でなにか個性がはっきりしている特徴があったら、系図を作ってルーツをたどってごらんになりませんか?意外なことが浮かび上がってくるかもしれませんね。